コラム

「アンケートから見た中高生のスマホ利用傾向と今後のセキュリティ対策」

日本スマートフォンセキュリティ協会(JSSEC)啓発事業部会では、スマートフォンを安心、安全に利用できるよう専門家の立場から啓発活動を推進しており、若年層を対象とした活動にも力を入れています。

2018年3月9日に都内の東京電機大学で開催された「JSSEC セキュリティフォーラム2018」では、啓発事業部会の部会長である藤平武巳氏が登壇。若年層などを対象に実施した調査結果などをもとに、スマートフォンがなければできなかった「繋がり」に価値を感じている人が多くいる一方、セキュリティ上のリスクや使用ルールなどについての意識はそれほど高くない実態を解説しました。

 

SNSでの繋がりを調べた2015年、「ギャップ」に着目した2016年
 
登壇した藤平氏は、講演の冒頭で啓発事業部会の役割について触れました。スマートフォンは、気軽にさまざまな情報を取得したり、アプリなどを通じてさまざまなサービスを利用できますが、利用方法によっては、犯罪やトラブルに巻き込まれるおそれもあります。

そこでJSSECでは、中高生の橋渡し役ともなる大学生と連携し、中高生のスマートフォン利用における安全教育プログラム「スマートフォンセキュリティ・ワークショッブ」を展開してきました。

また広く実態を把握するため、「学生や生徒達のスマートフォン使用の実態やトラブル」について定期的に調査を実施しています。

藤平氏は、2017年12月に実施した「中高生アンケート」および「世代別アンケート」の2つの最新調査結果の報告に先立ち、過去2年間の活動内容をざっと振り返りました。まず、2015年度調査結果のサマリとして、以下を紹介しました。

・約2割の生徒たちが、SNSで悪口や既読スルーといった「いやな思い」をしたことがある
・「現実世界で面識のない人と、SNSやLINEで連絡を取った事があるか」という問いに対し、約3割の生徒が「あり」と回答した
・前項で「あり」と答えた生徒のうち、「実際にあったことがあるか」という問いに対し、約4割の生徒が「あり」と回答した
・会った結果の感想として、友達が増えたなどの理由で、ほとんどの生徒が「よかった」と回答した

一方2016年度は、「新社会人となる大学生の不安、受け入れる企業の不安」に焦点をあててアンケートを実施しています。調査結果を「セキュリティフォーラム2017」で発表するとともに、学生を招いたパネルディスカッションを開催しました。

アンケート調査からは、大学生は日常的に使うコミュニケーションツールとして電子メールの活用が非常に少ないのに対し、社会人においては電子メールがメインツールのひとつになっているという「ギャップ」が浮き彫りになりました。

また、学生にSNSと携帯番号のそれぞれについて、「私用で上司とつながる必要があると言われたら?」と問いかけた結果も興味深いものがありました。「困る(「転職を考える」を含む)」の回答は携帯電話で37%だったのに対して、SNSでは48%と半数近くにのぼっています。

藤平氏はこれら調査結果について「ここにも世代間の感覚的なギャップが感じられた」と振り返りました。「セキュリティフォーラム2017」の模様については、以下のページから詳細を読むことが可能です。
https://www.jssec.org/column/20170208k-1.html

スマホデビューが低年齢化、一方で利用ルールは未整備

続いて藤平氏は、2017年度の最新の活動報告に移りました。今回の調査にあたり、子どもへの啓発活動を行う上で、仮説として次の2つの問題点を設定したことを明らかにしました。

1.子ども時代にスマホがなかった「大人世代」は、大人の視野でしか利用範囲を見ることができない
2.そのため、大人世代には見えていない利用範囲が「ギャップ」として存在し、その結果、必要な対策を取ることができていないのではないか?

これら仮説に正しく対峙し、解決することを目指して直接子どもに利用実態を聞くことで、大人には見えていないギャップを明らかにすることが目標にあったと藤平氏は述べました。また対面によるヒアリング調査には限界もあることから、広範囲で定期的に情報を取るためウェブによるアンケートを活用しています。

※JSSEC啓発事業部会における2017年度の活動
 

ウェブアンケートは、2017年12月5~12月10日に行い、中学3年生から高校3年生の1352名が回答しました。ちなみに比較対象となる前回調査は、2016年11月21日~11月28日に行い、同じくウェブアンケート調査方式で、中学3年から高校3年生の1536名を対象に実施しています。

詳細データとともに、藤平氏はその結果を以下のようにまとめました。

・スマホ利用の低年齢化は年々進んでいる
・家庭内でのスマホ利用ルールの整備は進んでいない
・ルールがある家庭も、利用時間や課金に関するルールが中心
・プライバシーなど、セキュリティ分野に関するルールが未整備のことが多い

藤平氏は、これらの結果から、大人と子どものスマホの利用方法の違いが、その背景にあると分析。子どもたちがスマホをどのように利用しているのかを把握することで、これからの社会でどのようなセキュリティ対策が必要となるのかについて考えることができると述べました。

さらに藤平氏は、アンケート結果の詳細に踏み込み、昨年と比較してスマホの使用率が全体で90%から96%に上昇。とくに中学生は65%から84%に急上昇している点に注目しています。

また、今回の調査では利用ルールの実態を明らかにするため、新たに詳細な質問を設定しており、家庭内ルールについては、決めている家庭が全体では微減していることが明らかになりました。一方学校の状況を見ると、中学校では「持ち込み禁止」が増加した一方、高校では「持ち込み禁止」が減少し、「授業中利用禁止」が増加しています。

「利用ルールの内容」については、「時間・場所等」「利用方法・課金」「プライバシー・その他」の角度から調査を実施しました。藤平氏による考察では、以下のようなポイントがあるといいます。

・時間や場所についてルールがあるのは全体の2割程度
・ルールを決めている割合が高いのは「中学生」と「男子」
・「利用アプリ」「SNSのつながり」のルールを2割程度が設定
・「課金ルール」を4割が設定
・ルールを決めている割合は女子学生の方が高い
・自分や家族の「写真投稿に関するルール」を決めているのは16%程度
・自分や家族の名前や住所に関する「個人情報ルール」を決めているのは3割程度。
・「個人情報ルール」はとくに女子学生で割合が高い傾向

プライバシーなどに関するルールが2割から3割程度である一方、「課金ルール」については4割と2倍近くが設定していることが印象的です。藤平氏によると、自由記入においても「通信量制限についてのルール」や「Wi-Fi接続下のみで使っていい」など、課金やお金の節約に関するルールが目立っています。

スマートフォンがなければできなかった「繋がり」に価値

ひき続き、藤平氏はもうひとつの調査である「世代別アンケート」の結果発表に移りました。こちらも2017年12月5日~12月10日に、ウェブアンケート調査方式で、15歳以上の1248名を対象に実施したものです。

デバイスの所有率を男女別に見ると、スマートフオンは50歳以上の女性の所有率が男性に比べて低いことが判明しました。また、フィーチャーフォン(ガラケー)は30歳未満の男性の所有率が女性に比べて高いことも明らかになったと言います。

※年代別のデバイス所有率
 

※自分や家族の写真をSNSなどに投稿すること
 

「友だちの顔写真をSNSなどに投稿すること」という設問では、他世代と比べ10代女性の「良くする」という回答率が高いことがわかりました。また「初めて会った人とSNSなどで繋がること」という設問の場合も、ほぼ同じ回答傾向が見られました。

※面識のない人とSNSなどで繋がること
 

※スマートフォンを利用しなければ経験できなかった、良かった出来事、嬉しかった出来事
 
藤平氏は、今回の調査を経てあらためて想定される4種類のリスクがあると述べました。ひとつは「マルウェアのリスク」です。そして2つ目は写真公開に関するリスクです。写真を公開してしまうと、インターネット上から削除できないおそれがあるほか、位置情報を示す情報が含まれている可能性もあります。また顔認識技術や映り込んだ第三者の情報が問題となることもあります。

さらに3つ目のリスクとしては写真とも関連することですが、「個人情報流出のリスク」もあります。氏名や住所、生年月日といった情報からパスワードが解読されるといった危険性もある点にも言及しました。

さらに藤平氏は、4つ目のリスクとして若年層が知らぬ間に犯罪行為に至ってしまう可能性を指摘しました。「不正アクセス」に手を染めてしまったり、思いがけずダウンロードしたアプリでサイバー攻撃など悪事に加担してしまうリスクも存在しています。

※調査結果より想定されるリスク
 

同氏は、こうしたリスクの解消に向けて、今後の啓発活動で引き続き、問題点を訴えていくと語りました。

また今後の活動では、実態を把握するためにもこれまで同様に調査を継続するだけでなく、子どもたちのトラブルを解消する「相談窓口」としてどのようなものがいいのかを考えていきたいと言います。

子どもたちはインターネットのトラブルに巻き込まれても、親には相談しない傾向が国際的な調査によりわかっており、そうした観点からも解決が必要であると藤平氏は提言しました。

また活動方針には、「ルールの整備」についても啓発活動について力を入れていくことも盛り込まれています。「実際に子どもたちがどのようにスマートフォンを使用しているか把握し、それをもとに話し合いながらルールを決めていくよう啓発したい」と藤平氏は述べるとともに、「各家庭でどのようなルールが定められているかデータを集め、どのようなルールがどのような効果を生んでいるか調べていきたい(藤平氏)」とビジョンを語り、講演を締めくくりました。

 

【編集協力:Security NEXT 企画制作部】