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発信元:利用部会
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安心・安全にIoTを活用するために求められていることは(前編)

2020年3月23日
2022年8月29日

3月6日『セキュリティフォーラム2020』を開催し、JSSEC利用部会の成果発表としてお伝えする予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため急遽フォーラムを中止といたしました。新型コロナウイルスの関係で多くの方がテレワークで仕事をされています。テレワークが最も適している業務はコラムなどの原稿作成ではないかと思い、今まで出来なかったことに挑戦する良い機会としてテレワークを活用し、フォーラムで講演予定でした一部をコラムとしてまとめることにしました。尚、本コラムの内容はJSSECなど組織としての見解ではなく、あくまでも個人的な意見となりますのでよろしくお願いします。 コラム前編では、「IoTはどのくらい普及しているか」「セキュリティへの不安を感じているか」など調査結果から見えて来たことを取り上げます。調査内容の詳細はJSSECホームページ「https://www.jssec.org/iot」をご参照ください。 コラム後編では、「IoTセキュリティチェックシート」を改定したねらい、「どのように活用してもらいたいか」など、IoTセキュリティ対策で重要となることを解説する予定です。 1.「IoTはどのくらい普及しているか」

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今後のIoTセキュリティ対策の検討および啓発活動への参考とすることを目的に「IoTはどのくらい普及しているのか」、「IoTの利用に不安を感じているのか」PR部会調査分析WGと共同で2020年1月にWebアンケート調査を実施しました。Webアンケートでは1万1千人の一般の方を対象に、本調査前のスクリーニング調査では、「家庭と職場でIoTを利用しているか」質問し、「家庭と職場でIoT利用している」と答えた方を「IoT先進利用者」と仮定し本調査を実施しました。
スクリーニング調査(図1)では「家庭でIoTを利用」、「職場でIoTを利用」、「家庭と職場でIoT利用」、「家庭でも職場でもIoTを利用していない」と主にIoTの利用実態からIoTがどこまで普及しているか、次のことがわかって来ました。
「家庭で利用」は17.6%となっており、一般的に言われているブレークスルーとなる20%にかなり近づいてきたことを示しています。一方「職場で利用」は11.5%にとどまっています。PCやスマートフォンと同じように、家庭などのコンシューマ利用が企業利用をけん引して行くと仮定すると、まもなく企業へのIoT導入に拍車がかかるのではと思われます。

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今回は、企業単位で回答対象を設定した調査ではありません。あくまでも企業へ勤めている人を回答対象とした調査になります。そこで、総務省の2017年調査報告(図2)を参考に比較してみると、企業への調査の中で、業種別の平均IoT導入状況は10%程度と今回の調査の11.5%と大きな乖離は有りませんでした。一方、資本規模別を見ると大手企業が20%近くと既にブレークスルーのポイントに達しています。その反面中小企業では10%未満と大きな差が出ております。経済産業省などが打ち出している日本版第四次産業革命ともいわれている「コネクテッドインダストリー」実現のためには、中小企業を含めたサプライチェーン全体でデジタル化が必要になってきます。
中小企業にどうIoTを普及していくのかなどの支援が検討されていますが、この中に「IoTセキュリティ」を合わせて行うことが重要ではないでしょうか。2.「セキュリティへの不安を感じているか」

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スクリーニング調査で「家庭と職場でIoTを利用している」と答えた「IoT先進利用者」807人の方に対して、本調査を実施し442人の方に回答を頂きました。
「IoTセキュリティの不安を感じたことが有るか」と質問した結果(図3)、70%近くの方が家庭でも職場でもIoTのセキュリティに不安を感じていることが分かりました。今回は不安を感じている理由の詳しい内容までの調査を行っておりませんが、今後どのような不安が多いのかもう少し詳しい調査を実施していくことが必要であることが分かりました。
IoTのセキュリティ対策についての質問(図4)に対して、職場では67.2%が対策されているとの回答でした。今回の回答者がIoT導入の推進者なのか、単にIoTを利用するユーザなのかは不明です。今後の調査ではIoT導入の推進者がどのような不安をもっているか、またIoT利用者がどのような不安を感じるのかなどの調査など立場に合わせた調査が、IoTセキュリティの啓発に繋げることが出来ることもわかって来ました。
また、家庭では36.4%の方々が対策をしていないと回答がありました。今回の調査対象は、家庭でも職場でもIoTを利用している先進的なユーザです。ある程度IoTに興味を持ち不安を感じながら比較的慎重に利用をされていることを思うと、先ずは被害が少なそうなところから使ってみる、今は、セキュリティ面でなにをやればよいかわからないことの表れと受け取れます。今後ブレークスルーを迎える段階では、周りの人が使っているから使ってみるかなど、あまり考えることなくIoTの利用が広まっていく段階を迎えます。セキュリティ対策がされない状態でIoT機器の利用が拡大する前に、具体的な対策が明示されていくことが重要ではないかと、調査を通じわかってまいりました。

次回後編は4月中旬ごろ、今回の調査結果を踏まえながら「IoTセキュリティ対策で重要となること」について解説する予定です。最後まで、ご覧頂きありがとうございました。JSSEC利用部会長 後藤悦夫(株式会社ラック)

2020年3月23日
2022年8月29日
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