ホーム > コラム > 26年8月号 セキュリティコラム「スマートフォン利用シーンに潜む脅威 Top10 2026『ランク外』の死角に潜む罠 Ⅱ」~増加する「セクストーション」~
コラム
利用者向け
発信元:
書いた人:本間 輝彰(副会長・理事)

26年8月号 セキュリティコラム「スマートフォン利用シーンに潜む脅威 Top10 2026『ランク外』の死角に潜む罠 Ⅱ」~増加する「セクストーション」~

2026年8月24日
2026年8月24日

第15回 スマートフォン利用シーンに潜む脅威 Top10 2026「ランク外」の死角に潜む罠 Ⅱ

~ 増加する「セクストーション」 ~

JSSEC副会長・理事

KDDI株式会社 本間 輝彰

スマートフォンが仕事やプライベートに欠かせないインフラとなった今、それを狙うサイバー犯罪や不正利用の手口も、生成AIを悪用するなどして急速に進化しています。

JSSEC利用部会では、スマホユーザーの目線で身近な危険を捉え、対策に役立てていただくため、「スマートフォン利用シーンに潜む脅威 Top10 2026(スマホ利用10大脅威2026)」を選定し、2026年5月18日に公開いたしました[1]

スマートフォン利用シーンに潜む脅威 Top10 2026

図1 スマートフォン利用シーンに潜む脅威 Top10 2026

ランク外にはなりましたが、前回(2023年)から新たに候補となった脅威の1つに「セクストーション」があります。オンライン上のやり取りから親密な写真や動画を言葉巧みに送らせ、それを盾に脅迫するこの手口は、巧妙な心理工作により誰もが当事者となり得る深刻な被害をもたらしています。今回は、この「セクストーション」の最新の手口と、被害に遭わないため・遭ってしまった場合の具体的な対策について解説します。

セクストーションとは

「セクストーション(Sextortion)」とは、「sex(性的)」と「extortion(脅迫・ゆすり)」を合わせた造語で、いわゆる「性的脅迫」のことです。性的画像などを盾に、金銭の要求やさらなる過激な要求を行う恐喝行為を指します。

混同されやすい「リベンジポルノ」との主な違いは、以下の2点にあります。

  • 目的の違い:リベンジポルノが過去の関係性に基づいた「復讐・嫌がらせ」目的であるのに対し、セクストーションは金銭の奪取や相手の支配を目的として、新たに性的画像等を入手・悪用します。
  • 被害者の傾向の違い:リベンジポルノは女性被害者が目立つのに対し、セクストーション(特に金銭目的の手口)では、オンライン上で油断した男性が被害に遭うケースも非常に多く発生しています。

なお、セクストーションは「権力による性的嫌がらせ」を指す造語として海外で使われ始めた言葉ですが、スマホやSNSが普及した2010年代から「性的画像を使ったサイバー恐喝犯罪」を指す言葉として世界的に定着しました。

国内でも、IPA(情報処理推進機構)が2017年に中高生等に向けた注意喚起[2]を行うなど、約10年前から警告されてきた脅威ですが、近年生成AIや闇バイト問題と結合したことで、その悪質性と危険性が一段と増しています。

セクストーションの手口と巧妙な仕掛け

セクストーションの脅迫までのプロセスにはいくつかのパターンがありますが、近年最も多く見られる代表的な流れは以下の通りです。

  1. 1.SNSやマッチングアプリでの接触

    SNSやマッチングアプリ、オンラインゲームなどを通じて親しくなり、何気ないやり取りで警戒心を解いていきます。

  2. 2.親密な写真・動画の交換を持ちかける

    関係が深まったタイミングで、「お互いの秘密にしよう」「写真(動画)を見せ合おう」と言葉巧みに性的な画像の送信やビデオ通話を誘ってきます。

  3. 3.偽の画像やディープフェイクで相手を安心させる

    攻撃者は被害者を信用させるため、積極的に自分のものとされる性的な写真を何度も送ってきます。しかし、この画像はインターネット上で入手した他人の写真や、生成AI(ディープフェイク)で作成された偽物であることがほとんどです。攻撃者は身元が特定されるリスクがないため、いくらでも写真を送ることができます。

  4. 4.被害者に写真を送らせ、裏で保存・録画する

    相手(攻撃者)をすっかり信用してしまった被害者は、要求に応じて自身の性的な写真や動画を送信(またはビデオ通話で露出)してしまいます。攻撃者はこれを即座に保存・画面録画します。

  5. 5.外部アプリへの誘導で「スマホの連絡先」を盗み取るケースも

    さらに攻撃者は、「もっと画質の良い別のアプリで話そう」などと言って公式ストア外の不正なアプリをインストールさせたり、連携認証を求めたりして、被害者のスマホの電話帳(連絡先データ)を密かに抜き取ろうとする場合もあります。

  6. 6.「周囲やネット上にばらまく」と脅迫・金銭要求

    画像を手に入れると、それまでの親密な態度を一変させます。「指定の期日までに金銭(暗号資産や電子マネー)を支払わなければ、写真(動画)をネット上にばらまく」と脅迫を開始します。

    特に、事前のアプローチで連絡先やSNSのフォロワー情報を握られている場合は、「家族や知人に直接送り付ける」とさらに強い脅迫を行ってきます。

  7. 7.心理的に追い詰められ、要求に従ってしまう

    「家族や友人に知られたら社会的に終わってしまう」「恥ずかしくて誰にも相談できない」という強い恐怖と孤立感から、被害者は冷静な判断ができなくなり、相手の要求に応じてお金を支払ってしまいます。

セクストーションの手口と巧妙な仕掛け

図2 セクストーションの手口と巧妙な仕掛け Top10 2026

なお、相手の要求に一度でも応じると、弱みにつけ込まれて繰り返し金銭を要求されることになります。払えなくなった被害者が「代わりに銀行口座の譲渡」を要求されて犯罪の出し抜きに悪用されたり、闇バイト(特殊詐欺など)へ強制的につなぎ止められたりするケースも発生しており、安易に応じることは極めて危険です。

実例:わずか6時間で奪われた17歳の命[3]

セクストーションは、単にお金を騙し取られるだけでなく、被害者を精神的に極限まで追い詰め、命の危険にすら及ぶ非常に卑劣で深刻な犯罪です。

2024年に報じられた海外の事例では、アメリカの17歳の少年がSNS上でセクストーションの標的となり、犯人とやり取りを始めてからわずか6時間後に自ら命を絶つという痛ましい事件が発生しました。犯人は見知らぬ女子生徒になりすまして少年に近づき、親密な写真を送らせた直後、家族や友人に画像をばらまくと脅迫して金を要求したのです。

後の調査で、脅迫を行っていたのはナイジェリアに拠点を置く国際的なサイバー犯罪グループであることが判明し、容疑者たちはアメリカへ移送されました。同様の事件はオーストラリアなど世界中で相次いで発生しており、国境を越えた組織的な手口として国際的な問題となっています。

国内でも急増する若年層の被害

この脅威は決して海外だけの出来事ではありません。国内で性暴力被害者の支援を行うNPO法人「ぱっぷす」では、「金銭セクストーション被害が急増している」[4]と強い警告を発しています。

同団体への相談データ(毎日新聞等の報道[5])によると、セクストーションの被害相談数は近年急増しており、その多くを10代をはじめとする未成年者が占めています。中でも高校生などの若年層が半数近くにのぼり、中には小・中学生が巻き込まれるケースも報告されています。SNSやオンラインゲームが日常化している若者世代にとって、セクストーションは非常に身近で深刻な脅威となっているのが現状です。

実際、JIJI.COM(時事通信)が同団体への取材をもとに報じた被害相談数の推移[6]を見ても、近年その被害がいかに急激な右肩上がりで拡大しているかが明白に読み取れます。

セクストーション被害相談者数の推移

図3 セクストーション被害相談者数の推移 Top10 2026

セクストーションの被害に遭わないための対策と対処法

  1. 最大の予防策:「外部に公開されて困る画像」は絶対に撮影・送信しない

    セクストーションを防ぐ基本は、どれほど親しい相手であっても性的な写真や動画を絶対に送らないことです。

    ネット上で知り合った相手はもちろん、現在交際しているパートナーであっても、人間の関係性や感情は将来変化する可能性があります。また、相手のスマホがハッキングされたり紛失したりして画像が流出するリスクもゼロではありません。

    さらに注意したいのが、デジタルデータの特性です。

    • 容易に複製・保存できる:
      一度送信した画像は、相手がスクリーンショットや画面録画をすれば瞬時に保存されます。
    • 完全に削除されたか確認できない:
      相手が「消した」「端末から削除した」と主張しても、それを第三者が証明・確認する手段はありません。クラウドや別端末に残されている可能性もあります。
  2. 万が一、恐喝・脅迫を受けてしまった場合の正しい対処法

    もし言葉巧みに誘惑され、写真を送ってしまったあとに脅迫されたとしても、絶対に犯人の要求に応じてはいけません。

    • 安易に金銭を支払わない(絶対にNG):
      恐喝に屈して一度でもお金(または電子マネー・暗号資産等)を支払ってしまうと、犯人に「ゆすれる相手」とみなされ、繰り返し追加の金を要求されます。お金を払ったからといって画像が削除される保証はなく、脅迫のリスクが消えることはありません。
    • 証拠を保存し、やり取りを中断する:
      脅迫メッセージや相手のアカウント情報、振込指定口座の画面、送信してしまった画像などは、削除せずに画面のスクリーンショット等で証拠として保存してください。その後、相手との連絡を断ち切ります。
    • 一人で抱え込まず、警察や専門機関に相談する:
      「恥ずかしい」「自分が愚かだった」と自分を責めて抱え込む必要はありません。セクストーションは犯人による卑劣な犯罪です。速やかに、しかるべき機関に相談してください。

【主な相談窓口】

  • 警察相談専用電話: #9110(全国共通の警察相談窓口)
  • 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター: #8891(はやくワンストップ)

まとめ:正しく恐れ、一人で抱え込まない社会へ

セクストーションは、人間の「信頼したい」「他人に言えない」という心理につけ込む、極めて悪質かつ卑劣なサイバー犯罪です。今回のJSSEC「10大脅威2026」では惜しくもランク外となりましたが、生成AIの悪用やSNSの普及に伴い、若い世代を中心にその被害は今まさに現実の脅威として猛威を振るっています。

被害を防ぐための基本は、どれほど親しい相手であっても「外部に見られて困る写真は絶対に撮らない・送らない」という強い意識を持つことです。

そして万が一、罠に落ちて脅迫されてしまったとしても、「決して自分を責めないこと」「絶対に要求(金銭の支払いや追加画像)に応じないこと」、そして「すぐに警察(#9110)や専門窓口に相談すること」を強く心に刻んでください。一度支払ってしまえば、被害が泥沼化するだけで問題は解決しません。

スマートフォンが生活のインフラとなった今だからこそ、私たちJSSECは今後も身近に潜むリスクとその対策を発信し続けてまいります。本コラムが、ご自身や大切なご家族・友人を脅威から守るための第一歩となれば幸いです。


[1]

JSSEC『スマートフォン利用シーンに潜む脅威 Top10 2026』を公開



[2]

https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2017/mgdayori20170810.html

[3]

https://www.bbc.com/japanese/articles/cv2243yv2mmo

[4]

https://www.paps.jp/sextortion

[5]

https://mainichi.jp/articles/20250718/k00/00m/040/094000c

[6]

https://www.jiji.com/jc/article?k=2026072700495

2026年8月24日
2026年8月24日
よく読まれている記事