JSSEC セキュリティコラム
26年3月号「増加し続けるSNS型投資詐欺・ロマンス詐欺」
~ SNSを使った詐欺の問題について ~
JSSEC副会長・理事
KDDI株式会社 本間 輝彰
ここ数年でSNSを起点とした投資詐欺・ロマンス詐欺が増え続けています。警察庁が公表した「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」※1(以下、警察庁調査)でも増加傾向は明らかと言えます。
SNSはスマホの普及に伴い新たなコミュニケーション手段として定着しています。また、従来の詐欺と異なり、攻撃者は事前に被害者の情報を入手しなくても、不特定多数に大規模な攻撃が可能という特徴があります。その結果、今後ますます問題となる可能性があります。
本コラムでは、SNSを使った詐欺の現状と課題を整理し、今後の問題点について提起していきます。SNSを使った詐欺では、技術的な対策が困難なことも多く、より多くの人にこのような詐欺があることを認識してもらうことが重要となります。本コラムを通じて、これら詐欺の問題を理解し、被害減少につながれば幸いです。
※1 https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/260213/03.html
SNS型投資・ロマンス詐欺の現状
SNS型投資詐欺とは、投資による利益を求めている人に対し、SNSを通じて交流を図り、利益が出るなどと謳って、金銭を搾取する攻撃となります。
SNS型ロマンス詐欺は、主に出会いを求める人に対して、SNSを通じて交流を図り恋愛感情や親近感を高めた後に、金銭的なトラブルを抱えているなど相談を行い金銭的な援助を求める詐欺となります。
警察庁調査においては、SNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は2023年比でそれぞれ約4.2倍、約3.6倍となっており、被害額は2023年比でそれぞれ約4.5倍、約3.2倍となっています。比較される特殊詐欺は被害額こそ約3.1倍と同様に増加していますが、被害件数は約1.5倍となっており、SNS型投資・ロマンス詐欺が急増していることがわかります。さらにSNS型投資詐欺に至っては、特殊詐欺の被害額と同程度となっております。
また、これらの詐欺は1件当たりの被害額が大きいのが特徴となっています。

図1 SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺の認知件数・被害額(警察庁調査)
生成AIの悪用によるSNS型投資詐欺の巧妙化
SNS型投資詐欺の大きな特徴は、フィッシング詐欺のように事前にメールアドレスを集めなくても、SNSの広告配信やおすすめ表示の仕組みを使って、不特定多数に広く接触できてしまう点にあります。広告は『属性』や『関心』に合わせて表示されるため、投資に興味がある人ほど詐欺広告に触れる確率が上がります。つまり、利用者側が情報を探していなくても、向こうから“見つけてくる”構造になっているのです。
警察庁の調査でも、SNS型投資詐欺の初期接触は、InstagramやYouTubeなど著名なSNS、投資家向けサイトが大半を占める結果となっています。特に2025年は、YouTubeをきっかけとした接触が約2,000%増と急増しています。背景として、YouTubeでショート動画が収益化され、ショート動画の投稿が増えたことが挙げられます。視聴の合間に挟まる広告に触れる機会が増え、さらに若年層ほどYouTubeの視聴時間が長いこと、年代別でも30代の被害が伸びていることなどから、ショート動画の増加が被害拡大の一因になっている可能性があります。
また、SNSでの初回接触の後、連絡手段をLINEに移すケースが多いことも特徴です。連絡を『閉じた場に移す』ことで、周囲の目が届きにくくなり、やり取りが継続しやすくなります。結果として、相手との距離が近いように感じてしまい、冷静な判断がしづらくなることが狙いだと考えられます。さらに、LINEのグループ機能や個別チャットを使えば、『他にも参加者がいる』『成功者がいる』という雰囲気を作りやすく、信頼を補強する演出にもつながります。

図2 SNS型投資詐欺の当初接触ツールと被害時の連絡ツール(警察庁調査)
SNS型投資詐欺が増える背景には、社会的な不安もあります。物価上昇、将来不安、老後資金への不安などから、『少しでも資産を増やしたい』という心理が強まりやすい状況です。新NISAなどの普及で投資への関心が高まる一方、投資経験が浅く判断材料が十分でない層も増えています。そうした中で、『AIによる高頻度トレードで安定的に儲かる』『プロが完全サポートする』といった勧誘は、仕組みがよく分からない人ほど『難しそうだから本物かもしれない』と感じてしまい、だまされるリスクが高まります。
そして近年、被害拡大を後押ししているのが生成AIの悪用です。ディープフェイク(偽動画・偽音声)により、著名人や専門家、ニュース報道のような演出を短時間で作れるようになりました。見た目がそれらしく作り込まれていると、『有名な人が言っているなら安心だ』と誤認しやすくなり、投資判断に大きな影響を与えてしまいます。
さらに、これまで海外発の詐欺では不自然な日本語が手がかりになることもありましたが、生成AIの登場で文章の違和感が減りました。丁寧で自然な言い回しの勧誘文、もっともらしい市場解説、質問への即時回答まで作れてしまうため、会話が続くほど信用してしまう危険があります。つまり、詐欺の『入口』だけでなく、『会話で信頼を積み上げる工程』まで自動化・高度化しているのです。
海外の事例では、投資詐欺のグループ(例:メッセージアプリのグループ)に誘導し、AIチャットボットを組み合わせて、グループ内で『儲かる投資話』や『成功体験』を演出する手口も確認されています※2。参加者が多く見える投稿や反応の一部をAIが担うことで、実態以上に“盛り上がっているコミュニティ”を作り出し、信頼を得たうえで個別チャットに誘導し、入金を迫ります。入金先が海外口座や仮想通貨になっているケースも多く、送金後の追跡や回収が難しくなりがちです。
SNS型詐欺の被害に合わないためには
SNS型投資詐欺は、生成AIの悪用によって『見抜きにくさ』と『だましやすさ』が同時に高まっています。今後も手口はさらに洗練される可能性があり、これまで以上に基本的な確認行動が重要になります。もちろん、SNS上の投資情報がすべて詐欺というわけではありません。しかし、広告やおすすめ表示で偶然目にした投資話は、最初から疑ってかかる姿勢が安全です。
情報の信ぴょう性を確かめるために、勧誘してくる相手に対して会社名、所在地、固定電話番号、登録番号などの提示を求めてください。提示がない、または質問を嫌がる場合は、それだけで危険信号です。
そのうえで、次のような公的・公式情報で照合することが大切です。
● 金融庁のサイト(免許・登録業者の確認)
● 日本証券業協会などの情報
● 当該事業者の公式サイト(URLが正規かも含めて確認)
証券会社などが金融商品を取り扱うには、金融商品取引法に基づき、原則として『第一種金融商品取引業者』等としての登録が必要です。登録が確認できない業者が投資を勧誘してくる場合は、基本的に無登録業者の可能性が高く、取引は避けるべきです。
また、証券会社で顧客に営業・勧誘を行う担当者は、一般に日本証券業協会が実施する『証券外務員資格(一種または二種)』に合格し、外務員登録を受ける必要があります。相手が『資格がある』『大手と提携している』などと言う場合でも、言葉だけで信用せず、所属会社名と氏名を確認し、公式情報で照合することが重要です。
※ ただし、登録や資格が確認できても『絶対に安全』とは限りません。最終的には、勧誘内容や送金方法に不自然さがないかまで含めて判断してください。
また、個人名義の口座、仮想通貨、海外口座・海外送金の要求が出た時点で、SNS型投資詐欺を強く疑ってください。正規の金融機関であれば、送金先・手続き・リスク説明が明確で、急かすような誘導は通常行いません。少しでも違和感があれば、送金はせずに止まってください。
『LINEへ移動』『投資グループ招待』は特に危険です。閉じたコミュニケーション環境では、相手が有利な情報だけを見せたり、成功者がたくさんいるように演出したりして、判断を鈍らせやすくなります。やり取りはできる限り公式サイトや公式窓口など、確認可能な手段で行うのが安全です。
著名人広告・ディープフェイクは『本物に見える』前提で疑います。ディープフェイク等により、著名人が投資を勧めているように見せかけるケースがあります。動画や音声、ニュース風の画像があっても、それだけで信用してはいけません。『広告で見た』『切り抜きで見た』は日常的に悪用される方法であり、本人の公式アカウントや公式サイトで同じ内容が確認できない情報は信用しないことが重要です。
少しでも不安なら、取引前に相談・通報します。『怪しいかも』と思った時点で、一人で抱え込まずに、早めに相談してください。送金前に止まれば被害を防げる可能性が高まります。相談先としては、金融庁や監督当局の相談窓口、警察の相談窓口、消費生活センターなどがあります。
中高年がメインターゲットのSNS型ロマンス詐欺
警察庁の調査によると、SNS型ロマンス詐欺の『最初の接触』は、マッチングアプリが全体の4分の1以上を占めています。さらに、InstagramやFacebookを加えると、全体の約75%がこれらのサービス経由となっており、出会いの入口が特定のプラットフォームに集中していることが分かります。つまり、普段の生活の中で自然に出会いが生まれにくい人ほど、オンライン上の出会いに頼りやすく、その分リスクにも触れやすい状況です。
背景には、マッチングアプリ市場そのものの拡大があります。市場は国内外で成長しており、2023年時点で約100億米ドル(Statista, 2024)を超え、今後も年平均成長率(CAGR)8%以上で伸び続けると予測されています。日本でも利用者数は年々増加し、2024年には1,500万人を突破しています※3。多くのマッチングアプリは婚活・恋活を目的としており、運営側も本人確認や通報機能など、安全対策を進めています。
一方で、利用者が増えるほど、悪意ある利用者が紛れ込む余地も大きくなります。たとえば、いわゆる『パパ活』など金銭目的の接触だけでなく、最初から詐欺を目的に近づき、恋愛感情を利用してお金を引き出そうとするケースも一定数存在します。プロフィールやメッセージが丁寧で、やり取りが自然であるほど、警戒心が下がりやすい点が問題です。

図3 SNS型ロマンス詐欺の当初接触ツールと被害時の連絡ツール(警察庁調査)
被害者の傾向を見ると、SNS型ロマンス詐欺は男女を問わず40代~60代が中心で、全体の70%超を占めています。さらに、被害者は男性が女性の約2倍という実態もあります。仕事や生活が落ち着く一方で、孤独感や将来不安を抱えやすい年代でもあり、『理解してくれる相手が現れた』という感覚が、相手への信頼につながりやすいと考えられます。

図4 SNS型ロマンス詐欺の年代別認知件数(警察庁調査)
近年は、SNS型ロマンス詐欺でも生成AIの悪用が問題になっています。生成AIを使って著名人になりすました画像を作り、被害者に送信して信頼を得たうえで、連絡を重ねて親密度を高め、最終的に1億3,000万円をだまし取られた事例も報告されています※4。著名人は、画像や動画など『素材』が入手しやすく、インタビュー記事やSNS投稿から口調・性格・生活情報まで真似しやすいことが悪用の土台になります。さらに、相手が著名人のファンだった場合、『まさか自分が選ばれるはずがない』と思いながらも、特別感で冷静さを失ってしまうことがあります。
また、ロマンス詐欺の舞台はマッチングアプリやSNSに限りません。別の事例として、VRChatで親しくなり、アバター同士で結婚式を挙げた後、『現実でも会いたい』と持ちかけられ、渡航費や生活費名目で890万円を送金し被害に遭ったケースもあります※5。オンライン上で共有した時間が長いほど、関係が『本物』と感じられやすく、金銭要求に対する心理的ハードルが下がりやすい点に注意が必要です。
※3 https://meetingtechnology.co.jp/column/matching-app-now-future
※4 https://www.bbc.com/japanese/articles/cg45zgkg2l6o
※5 https://guardian.jpn.com/security/scams/romance-scam/news/cases-2025/
SNS型ロマンス詐欺の被害に合わないためには
SNS型ロマンス詐欺は、マッチングアプリやSNSで『信頼関係(恋愛感情)』を作ったうえで、金銭をだまし取る手口です。相手が優しく、会話が自然で、毎日連絡が続くほど『まさか詐欺ではない』と思いやすくなります。さらに近年は、生成AIによるなりすまし画像・文章作成などで、プロフィールやメッセージがより精巧になっており、見抜く難易度が上がっています。だからこそ、気持ちが動いている時ほど、確認の手順を決めておくことが重要です。
ロマンス詐欺では、相手が身元の特定につながる情報を避ける傾向があります。本名、勤務先、住所などの話になると話を濁す、顔写真はあるのに、通話・ビデオ通話を避ける、会う約束をしても直前でキャンセルが続くなどは危険信号となります。可能であれば、早い段階でビデオ通話を提案してください。ここを頑なに避ける相手は注意が必要です。
※ 生成AIを通してフェイク画像でビデオ通話する技術もあるため、ビデオ通話のみで信頼するのは早計となります。
初期接触はマッチングアプリやInstagramでも、その後すぐにLINEや別アプリへ移動させるケースが多いです。連絡手段を閉じた場に移すと、運営の監視や通報が届きにくくなり、相手にとって都合が良くなります。したがって、誘導があった場合、少なくとも相手の身元確認ができるまで移動しない、または移動しても金銭や個人情報の話題が出たら即停止する、というルールを持っておくと安全です。
SNS型ロマンス詐欺の見分け方で最も重要なのはここです。関係性が深まっていても、『 生活費、治療費、借金、家族のトラブルなどの援助依頼』『会うための渡航費・ホテル代・手続き費用の請求』『一緒に将来のためになどと言って投資や副業を勧める』など金銭の話が出た時点で詐欺を強く疑ってください。
特に、『投資の話』はSNS型投資詐欺と結びついた複合型になりやすく、被害額も大きくなりがちです。恋愛の文脈で投資を勧めてくる時点で不自然だと考えてください。
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詐欺は冷静な確認をさせないように動きます。『「今日中に必要」「今だけ」「すぐ送って」など時間を急がせる』『「誰にも言わないで」「家族に反対されるから」など秘密を求める』『断ると急に怒る、罪悪感をあおる、別れをちらつかせる』などの行動は典型的な危険サインです。
最近は生成AIで、著名人風の画像や、本人らしい文章を作ることができます。また、軍人・医師・投資家・海外勤務など『忙しくて会えない設定』もよく使われます。画像検索(逆画像検索)で写真の出どころを確認したり、相手の名前・肩書を公式情報で照合したりするのが有効です(ただし偽情報もあるため過信は禁物です)。
恋愛感情が絡むと判断が難しくなるため、『会ったことがない相手にお金は送らない』『どんな理由でも、仮想通貨送金・海外送金はしない』など金銭に関するルールを事前に決めておくことが効果的です。たとえば次のようなルールです。
『証拠がない』『まだ被害が出ていない』と感じても、相談は早いほど有効です。送金前に止まれば、防げる可能性が大きく上がります。
相談先としては、警察相談専用電話、消費生活センター、マッチングアプリやSNSの通報機能などがあります。
まとめ
SNS型の詐欺では、人間の心理的な弱点を巧みに突いてきます。特に利用されるのが、『権威への服従』『希少性の原理』『社会的証明』『返報性の原理』といった心理学的なテクニックです。
これらによって相手に信頼や好意を抱かせ、判断力が弱まったところで送金や投資、個人情報の提供へと誘導します。『肩書や甘い言葉』ではなく、外部SNSへの移動の要求、会えない理由の反復、金銭の話題といった行動から危険信号を見抜き、少しでも不審なら一旦立ち止まって確認・相談することが大切です。
